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第146話 一昨日来やがれ

Author: 酔夫人
last update publish date: 2026-08-01 06:00:23

「実花お嬢様」

父の秘書である高峰に声をかけられ、実花は読んでいた本から顔を上げた。

休日の午後。

藤宮家のリビングには、実花のほかに真理がいた。

真理はソファに座り、実花のために用意された焼き菓子を当然のように食べている。

「どうしたの?」

「東国政近様より、実花お嬢様を食事へ招待したいとの申し出がございました」

「え……」

実花が目を見開く。

広告が発表されてから、まだ数日しか経っていない。

それなのに、東国の当主である政近から食事の誘いが来た。

実篤たちが立てた作戦は、驚くほど早く効果を表した。

「情けないくらい簡単に釣れたね」

真理が呆れたように呟く。

「自分がすべての中心じゃないと気が済まない人なんだよね。光也さんが注目されたことが、よほど面白くなかったんだよ」

真理は焼き菓子を一つ摘まみ、口へ運ぶ。

「自分の息子が褒めら

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  • 愛されること~夫と義妹に殺されたので、今世では悪女になります   第1話 裏切りの食卓(1)

    その夜の記憶は、実花の頭の奥底に、まるで消えない染みのように残っている。思い出そうとしなくても勝手に浮かび上がり、忘れようとすればするほど輪郭を濃くしていく。そんな種類の記憶だった。.実花が夫の恒一と暮らしていた藤宮家の別邸は、その夜も例外なく重たく閉ざされていた。外の世界から切り離されたような敷地の中では季節の風すら遠慮がちに通り過ぎ、建物全体が呼吸を止めているように静かだった。ダイニングに入った瞬間、まず実花の目に飛び込んでくるのは過剰なほどの準備をされたテーブル。皺ひとつないクロス。寸分違わぬ位置に並べられた銀のカトラリー。食器の反射すら計算され

  • 愛されること~夫と義妹に殺されたので、今世では悪女になります   第7話 父親の視線

    扉が開いた瞬間、空気が変わった。それまで室内に漂っていた柔らかな熱が、一瞬で冷え切る。重く、鋭く、抗うことを許さない圧が部屋の中へと流れ込んできた。「実花」低い声。その一言だけで、使用人たちの背筋が一斉に伸びる。まるで空気そのものが命令を受けたかのようだった。藤宮実篤。藤宮グループの頂点に立つ男は、いつだって“場の支配者”として現れる。誰かと会話をしていても、笑みを浮かべていても、その場の空気は最終的に彼のものになる。逆らうことを考える前に、人は自然と従う。そういう種類の男だった。実篤の視線がまっすぐ実花へ向く。そして次の瞬間、その目がわずかに見開かれた。「……そ

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